パートも有給休暇を取得できる?取得条件と日数を紹介

政府は有給休暇の取得率を高めることに力を入れています。毎年10月は「年次有給休暇取得促進期間」として、厚生労働省が積極的に広報活動をしている期間です。
令和2年には、年次有給休暇の取得率が56.6%と過去最高となっていますが、政府の目標としている70%には届いていません。これからも、年次有給休暇の取得率アップに向けた施策が行われることでしょう。今回は、パートにおける有給休暇の取得条件と日数を紹介します。
【目次】
1. そもそも有給休暇ってなに?
有給休暇とは、給料が支払われながら、会社を休むことができる休暇のことです。正しくは「年次有給休暇」という、労働基準法に定められている労働者の権利です。
そもそもは、疲労回復や健康維持などの心身のリフレッシュや、ゆとりのある生活を保障するために作られました。
会社などの使用者は労働者に与えることが義務になっているのですが、平成28年度の有給消化率は、約48%。世界的に見てもとても低いのが現状です。
そこで取得率を上げるために、「働き方改革関連法」で取得を義務化するなど、国を挙げての対策が講じられています。現在は低い取得率ですが、近い将来高い数値になるかもしれません。
(出典)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/16/dl/gaikyou.pdf
2.パートでも有給はもらえるの?
あまり知られていませんが、実はパートでも有給休暇の取得は可能です。ここでは、パートが有給休暇を取得するのに必要な条件や、もらえない場合などをご説明します。
パートの有休取得に必要な条件
勤続期間が6ヶ月以上
同じパート先で、6ヶ月以上勤務していることが条件です。たとえ雇用契約書に記載されている期間が3ヶ月などの短期契約であっても、契約更新をして6ヶ月以上続いているのであれば、この条件に該当します。また、試用期間も6ヶ月の内に含まれます。
全労働日の8割以上の出勤
雇用契約書・労働契約書内に書かれている労働日(※)のうち、8割以上の日数を出勤していればOKです。もし週1回だったとしても、半年間欠勤が4日以下であれば有給休暇は取得可能です。
※ただし週〇回と定められていない場合は、半年間の勤務実績を×2する、などして予定される1年間の所定労働日を計算します。
出勤率8割を計算する際には、次の点に注意が必要です。
・出勤日に追加する項目
業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間は、出勤とみなす必要があります。
・労働日から除外する項目
会社都合の休業期間などは、労働日から除外します。
有給の取得時季が指定される場合
有給休暇は労働者が取得したい日を指定します。また、パート先の会社は労働者が指定した日に、有給休暇を取得させる必要があります。
しかし、どうしても人手が足りない時もあるでしょう。その場合は、会社側に休暇日を変更する権利があります。これを時季変更権といいます。
ただ、繁忙期のようにあらかじめ忙しいとわかっている時期は、会社側で有給休暇取得による人手不足を予測し、対策を取っておく必要があります。繁忙期を理由に時季変更権を行使することはできません。
たとえば、同じ日に多くの従業員が有給休暇の取得を申請し、業務が正常に動かないときに会社は時季変更権を行使することができます。
有給休暇がもらえない場合
有給休暇は、原則労働者の希望する日に取得でき、パート先は拒否をすることができません。しかし雇用者には時季変更権という権利があり、「事業の正常な運営を妨げる」場合においてのみ、パート先は有給休暇の日にちを変更することができます。
つまり、年末などの繁忙期には有給休暇を申請しても却下されることがある、ということです。有給休暇を取得するときは、しっかりと日にちを選んで申請しましょう。
3.有給休暇の日数は?
パートの有給休暇は、勤続期間によって取得できる日数が違います。以下を参考に、自分が何日取得できるのかチェックしましょう。
週1〜4回働いている場合
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 雇入れ日から起算した継続勤務期間(単位:年) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | ||
4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
(出典)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html
例えば、週1日パートをしていれば、6ヶ月の勤務で1日、1年半の勤務で2日の有給休暇が取得できます。勤務日数や勤続期間が多ければ多いほど、取得できる有給休暇の日数も多くなります。
週5回以上、または週30時間以上働いている場合
雇入れの日から起算した勤続期間 | 付与される休暇の日数 |
---|---|
6か月 | 10労働日 |
1年6か月 | 11労働日 |
2年6か月 | 12労働日 |
3年6か月 | 14労働日 |
4年6か月 | 16労働日 |
5年6か月 | 18労働日 |
6年6か月以上 | 20労働日 |
(出典)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html
週5日以上や、4日以下でも週30時間以上パートをしているなど、フルタイムに近い働き方をしている場合は、正社員と同じ有給休暇日数を取得できます。
週5日以上を3年半続ければ、14日の有給休暇が取得可能です。ただし6年半以上は取得可能日数は20日で固定され、増えることはありません。
4.有給取得した際の受給額の計算方法
パートが有給休暇を取得したときに支払われる賃金は、3パターンあります。パート先によって異なり、就業規則などに記載されていることが多いです。
予定していた賃金と違った、などトラブルの元になりやすいので、取得前に確認しておきましょう。賃金計算はどれも簡単なので、ぜひ計算してみてください。
1.通常の賃金
あらかじめ働く時間や時給が決まっている場合は、次の計算式で求めます。
その日働くはずだった時間×時給
たとえば、時給1,200円で7時間勤務の場合、次のようになります。
通常の賃金=その日働くはずだった時間7時間×時給1,200円=8,400円
2.平均賃金
月のシフトに変動がある場合は、直近3ヶ月の平均賃金で受領額を計算します。
過去3ヶ月の賃金総額÷その期間の労働日数
たとえば、3ヶ月の賃金総額が15万円、その期間の労働日数が30日の場合、次のようになります。
平均賃金=過去3ヶ月の賃金総額15万円÷その期間の労働日数30日=5,000円
3.健康保険の標準報酬日額
標準報酬月額(※)÷30日
※全国健康保険協会の都道府県毎の保険料額が基準。個人の給与額によって変わります。
ただし、バイトやパートの場合、勤務先の健康保険に加入していないと採用されません。
退職時に有給が残っている場合
正社員と同様に、パートも有給休暇を取得できます。では、退職時に有給が残っている場合はどうなるのでしょうか。ここでは、ふたつのケースを見ていきましょう。
退職日までに使い切る
有給の有効期間は2年間となっており、1年で使い切らない場合は次年度に持ち越します。
しかし、退職する場合は有給を消化できなかった分は消滅するので注意が必要です。退職時に有給が残っている場合は、退職日までに使い切ることができます。
たとえば、有給が3日残っているなら退職日前の3日は有給を使って休む、または退職日を3日伸ばして有給に充てるなど、工夫をして有給を使い切るようにしましょう。
例外的に買い取ってもらえる
有給は労働者の休息が目的とされているため、原則として買い取りは禁止されています。ただし、退職時や有給の時効が近く、消滅する可能性がある場合は例外的に買い取ってもらうことも可能です。
有給の買い取りは会社の任意です。会社側に買い取りの意思がなければ、買い取ってもらえずに消滅します。また、買い取ってもらう際の価格は会社側で決定されます。退職前に有給の買い取りの有無や、その価格を必ず確認しておくようにしましょう。
有給を取得するときは繁忙期を避けることが大切
有給休暇は、繁忙期だからといって会社が取得を拒否できません。しかし、強引に有給を取得すると会社の業務がうまく進まなかったり、人間関係が悪くなったりする可能性もあります。できるだけ円滑に有給を取得するためには、繁忙期を避けましょう。
また、ほかの人と有給が重なっても、スムーズに有給が取得できない可能性もあります。有給の取得を考える際には、ほかの人の勤務状況も把握しておくと良いでしょう。
まとめ
実際に取得している人を見かけることの少ない、パートの有給休暇。認知度の低さ故に、「パートは有給とれないよ。」なんて言われてしまうこともあります。
そんなときは本記事に書かれていることをしっかりと説明しましょう。それでもダメな場合は、労働基準監督署に相談してみるのもおすすめ。
有給休暇を取得してゆとりのある生活をすれば、仕事へのモチベーションも上がります。労働者の権利である有給休暇、積極的に取得しましょう!