医師の健康を確保するために。医師の働き方改革を実行するには

働き方改革として、近年、労働時間の制限などの法改正が行われてきました。今後、企業の規模などに応じて順次適用される見込みです。この働き方改革は、過重労働が指摘される医師においても例外ではありません。

ここでは、働き方改革の実現を阻害する医師の現状の働き方、過重労働の問題点、働き方改革実現に向けた取り組みまで紹介します。

医師の働き方の現状と今後の展望

現状、医師の働き方はどのようになっているのか、今後働き方改革によってどのように変化する可能性があるのか解説します。

過重労働で休日の確保が困難な医師が多い

過重労働で休日の確保が難しい医師が多いといわれています。なぜ医師は過重労働になりやすいのでしょうか。医師の働き方の現状を、勤務時間と当直のふたつに分けてみていきましょう。

・勤務時間が長い
総務省による「平成24年就業構造基本調査」をもとに厚生労働省がまとめた資料によると、歯科医師や獣医師を除く医師のうち、41.8%は1週間の労働時間が60時間を超えていることが明らかになりました。

出典:「第1回 医師の働き方改革に関する検討会 資料3 医師の勤務実態等について」(厚生労働省)

これは他業種との比較でも、もっとも高い割合で、実に半数に近い医師が週60時間以上の長時間労働をしていることが分かります。

このように長時間労働を強いられる医師が多い理由のひとつが、多岐にわたる業務量です。採血や検査・入院の説明、診断書の入力など、診療以外にもさまざまな仕事を医師が負担している現状があります。

・当直による負担
もうひとつ、医師の負担になっているのが当直です。ほとんど診療が発生せず休息が取れるケースもありますが、救急など時間外でも受け入れのある病院では、当直でも日中と同じように診療が発生することもあります。

このような診療の頻度が高い当直の場合、またオンコールでも頻繁に診療が発生する場合は、翌日勤務と合わせて連勤となり、睡眠時間を十分に確保できないケースも少なくありません。

2024年から医師の時間外労働の規制が導入

働き方改革では、原則1ヶ月45時間、1年360時間の時間外労働の規制が設けられるようになりました。

しかし、週60時間以上労働に従事する医師が多い状況で、原則を守ることは困難と考えられます。労働基準法に定められた週40時間を超える時間外労働は、週60時間の勤務とすると時間外労働週20時間となり、1年で960時間に達してしまうためです。

そこで、医師に関しては2024年4月から現状を考慮して、年960時間、月100時間(例外あり)の時間外労働の上限が定められることになります。

ただし、医療体制が崩れないよう、地域医療確保暫定特例水準、集中的技能向上水準に該当する医療機関については、休日労働含み年1,860時間、月100時間(例外あり)が適用される見込みです。(将来的には一般的な医療機関に適用される上限に合わせて削減される予定)

医師の過重労働を引き起こす要因

過重労働につながっている医師の現状として、勤務時間の長さ、当直の負担を挙げましたが、そもそもの原因としてなぜこのような過重労働が起きているのでしょうか。医師の過重労働の根本的な要因3つを説明します。

人手不足

医師の過重労働は、単純に医師の数が足りていないことが原因のひとつです。ほか先進国と比べて人口当たりの医師が少ないにもかかわらず、日本は医師の数に対する病床数やひとりあたりの医療機関受診数は多いといいます。

このように、全体だけをみても医師不足が明らかなわけです。加えて、医師は地域、診療科にも偏りが見られ、医師数の少ない地域、医師数の少ない診療科では、さらに医師ひとり当たりの負担が高くなりやすい現状があります。

患者と密接した関わり方

けがや病気の症状の度合いにかかわらず、緊急性の低い場合であっても救急車や救急病院など時間外の診療を利用する患者は少なくありません。

しかし、このような緊急を要しない症状であっても、医師は患者の求めに応じる必要があります。医師には、正当な事由がなければ診療治療の求めを拒否できないという、応召義務があるためです。

また、患者の求めがない場合であっても、日常の中で人々が常にアクセスしやすい医療を確保しなければならない背景があるため、医師は過重労働に陥りやすくなっています。

医師の自己研鑽

一般的な職業と異なり、医師を含めた法定資格では、自己研鑽、つまり個々のスキルや能力の向上、適応が制度上の責務として問われています。常に高度な専門性が問われる職種であり、患者の生命に直接影響を及ぼすためです。

実際に新しい診療や治療法の習得・普及は個人の努力に委ねられてはいますが、質の高い医療を提供したいという職業意識の高さから、自己研鑽に勤しむ医師も多くいます。このような背景も、医師の過重労働につながる要因のひとつです。

医師の働き方改革を実行するための方法

医師の過重労働の現状や背景は前述のとおりですが、働き方改革による時間外労働の上限規制に向けて、医療機関は医師の労働を見直す必要が出てきました。医師の働き方改革を実行するためにできる方法にはどういったものがあるのでしょうか。

ここでは、医師の働き方改革実行のヒントを3つ紹介します。

タスクシフティングを推進する

タスクシフティングとは、医師の担っている仕事の一部を多職種に移行することです。たとえば、医療事務の補助を担うクラーク、一定の医療行為が可能な特定行為研修を終えた看護師などフィジシャン・アシスタント(医師の監督のもと医療行為を行う医療従事者)の活用が考えられます。

この場合、医師自身がすべての作業を行う責任があるという意識が根付いているケースもありますので、医療補助人材の育成や活用ともに、医師の意識改革も必要です。

ICTを活用する

ICT活用の流れは、医療現場においても重要なカギを握ります。電子カルテの導入で情報共有を図る方法のほか、法改正によって規制緩和が進んだのがオンライン診療やオンラインカンファレンスです。

こうしたICTの活用によって期待されるのが、遠隔地での医療機関同士の情報共有の円滑化。そして、地域偏在の解消です。

勤務時間を見直す

当直のほか、自己研鑽のためにほかの病院と掛け持ちで仕事をする医師もいるため、実際の労働時間が不透明となっているケースは少なくありません。適切な労働時間内で収めるように対策を立てるためにも重要なのは、まず正確な勤務時間を洗い出すこと。

ICカードやタイムカードなどで、出退勤時間を正確に把握できるようにしておくことが大切です。実際の勤務時間が分かったら勤務時間が過剰でないか見直しを図ります。勤務時間を適正に収めるために、時間がかかりそうな会議や打ち合わせの時間をあらかじめ設定しておくのも良いでしょう。

Workinでは、今回紹介した医師関連のほか、働き方改革に関する情報を掲載しています。今後どのように働き方改革が進められていくのか、どのような対策が必要なのか、ぜひ参考にしてください。

まとめ

働き方改革の波は、一般的に労働時間や拘束時間が長い医業にもきています。時間外労働の上限について、実際に適用されるのは2024年4月からですが、適正労働時間内で収めるには早め早めの対策が必要です。