運送業界が人手不足に陥っている原因と積極的な解決策

運送業界全体を取り巻く人手不足。募集をかけてもなかなか人が集まらないのは、運送業界特有の状況が関係しているからかもしれません。運送業界が人手不足に悩む原因から解決策までをご紹介します。

運送業界全体が人手不足状態

運送業界全体で人手不足が問題になっているといいます。実際にどのくらい人手が足りていないのでしょうか。

求職者を上回る求人数

2019年10月の有効求人倍率(季節調整値)は、全体で1.57倍でした。

出典:「一般職業紹介状況(令和元年10月分)について」(厚生労働省)

年々、有効求人倍率は伸びており、求職者に対して企業側の需要が高い状態が続いています。

職業別にみると、需要と供給バランスの差は顕著です。たとえば、運送業。(厚生労働省では輸送・機械運転業に分類)中でも、ドライバー(厚生労働省では自動車運転の職業)といわれる職業の求人倍率は、2019年10月時点では3.15倍で高い数値となっています。

出典:「一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))」(厚生労働省)

通常の求人倍率の2倍を上回る求人数です。運送業界で需要が高まっているのは、EC利用によるインターネット取引の増加、荷待ち増加なども要因となっています。

物流分野全体で人手不足感が強まっている

厚生労働省が調査を行っている12の業種の労働者不足の割合は、2019年11月の調査では41%でした。運輸業・郵便業に関しては56%で、平均よりも15%も高い数値となっています。

出典:「労働経済動向調査(2019年11月)の概況 (産業別正社員等労働者過不足状況と労働者過不足判断D.I.)」(厚生労働省)

このように数値としても顕著な物流分野の人手不足ですが、該当する企業自身も人手不足感を痛感していることが分かっています。

全日本トラック協会の企業調査によると、2019年4~6月期で人手不足と回答した企業は全体の28.5%。やや不足を含めると72.3%に達し、トラック業界全体の7割が人手不足に悩んでいることが分かりました。

出典:「第106回 トラック運送業界の景況感(速報)平成30年4月~令和元年6月期 (雇用状況)(労働力の不足感)」(公益社団法人 全日本トラック協会)

いずれのデータを確認すると、運送業に限らず、ドライバーを必要とする物流分野全体で人手不足が起きていることが分かります。

なぜ運送業が人手不足に陥っているのか

データを交えながら運送業界の人手不足について説明してきました。それでは、なぜほかの業界と比較して、運送業界は人手不足が顕著なのでしょうか。荷待ちやECなどによる需要の増加以外に、労働環境や高齢化の問題も運送業は抱えています。

労働環境が悪いという業界イメージ

運送業は、低賃金な上に労働時間が長いというイメージが浸透してしまっています。近年、大手の運送業を中心に労働環境が注目されるようになったためです。

労働時間が長いのは需要の増加もひとつの要因ですが、トラックの積載率が悪い、荷物の積み下ろしでかかる荷待ち時間が長いなどの問題も要因となっています。

こうした状況で、労働環境を整えつつ、新たな労働の担い手を見つける必要がありますが、運送業界ではそれも困難です。たとえば、女性にスポットを当てると、女性の割合は多業種と比較すると極めて少なく、全体では女性が働きにくい職場になっています。

高齢化状態

運送業界では、全業種と比較したときの高齢化も問題になっています。労働環境が悪いというイメージから若年層が集まりにくいためです。労働の担い手は、40~50代が主流。運送業界で働く29歳以下の割合は低い状態が続いています。

このように、運送業界はほかの業界と比較すると、人手不足に陥りやすい環境ができあがっているといえるでしょう。

運送業界の人手不足に拍車をかける要因

高齢化や運送業界に対するイメージも人手不足の原因ではありますが、各種対策はとられつつあります。運送業界の人手不足をさらに加速させているのは、イメージや高齢化だけでなく、運送業界ならではの理由です。運送の効率が悪いこと、宅配需要が拡大したことが挙げられます。

運送の効率が悪い

運送業界が人手不足に悩んでいるにもかかわらず、営業用トラックの積載効率は、年々低下しています。国土交通省の統計によれば、1993年には55%ほどだったトラックの積載効率は2018年には40%以下へ。25年の間に積載効率が上がるどころか、15%ほど低下していることが分かります。

出典:「物流を取り巻く現状」(国土交通省)

荷台に乗っている荷物が少ない状態で稼働しているトラックが多いのです。しかし、このような積載効率の悪さが現状にあっても、消費者の細かな要望に応える必要があるため、改善が難しいのもまた事実。

ものを運ぶのに最低でも運転手ひとりは必要になるため、積載量が半分に満たなくても、需要に合わせて運送業者は稼働せざるを得ません。こうした積載効率の悪さを助長させている要因のひとつが、ラストマイルです。

ラストマイルとは、最寄りの営業所などから個人などの個別の配送地を指すことばで、運送業者は荷物を決められた一定の場所ではなく、各家庭などに要望に応じて届けなければならないことを意味します。

これに加え、荷物をトラックに運び入れる荷待ち時間の無駄もあり、効率の悪い状態ができあがっているのが現状です。これにより、物流は滞り悪循環となっています。

宅配を主流とする事業が増えている

宅配をメインにする事業が増えてきているのも運送業界の人手不足に拍車をかけます。事業者は、Eコマースを利用してネット上で商品の販売ができるようになり、消費者はネット上から商品を選択し購入できるようになりました。

消費者はより便利に商品を購入できる時代になりましたが、これにより負担を被ることになったのが物流を担う運送業者です。ラストマイルの問題だけでなく、消費者の細かい納期の要望にも応えなければならない状況は、トラック積載効率の低下にも大きく関係しています。

今後は高齢化によって、自宅にものを取り寄せるニーズが拡大することから、こうした宅配の件数はさらに増えることが予想されているのも問題です。

運送業の人手不足の解決を目的とした国の取り組み

人手不足が深刻な運送業ですが、運送業は、豊かな国民生活、産業競争強化における重要な社会インフラであることも確かです。運送業全体が人手不足から脱却できるよう、国でも取り組みがはじまっています。

労働条件の見直し

運送業界の求職者を増やそうと、法的な労働条件の見直しが行われています。

・改善基準告示
荷待ち時間を含めた拘束時間の規制(原則1日13時間以内、1ヶ月293時間以内)、継続8時間以上の休息時間、4時間を超えない連続運転時間、など。

ほかにも、乗務時間や荷待ち時間の記録が義務付けられるようになりました。しかし、労働条件の規制だけでは、労働条件を良くすることは困難です。

政府は、2023年までの時限措置を設け、運送業界での労働者の確保と労働環境の改善を促進するために、「貨物自動車運送事業法」改正によって、標準運賃告知制度の導入も進めています。

女性や若者が働きやすいよう支援

人手不足に悩む運送業界において、女性ドライバーの採用は急務です。女性トラックドライバーのイメージを向上させるために、国主導で「トラガール促進プロジェクト」が立ち上がっています。

トラガール促進プロジェクト

同時に、運送業界で少ない若者にもトラックドライバーとして活躍してもらうために、資格取得のサポートも実施。人材開発支援助成金では、運送会社の職務に関連する、準中型免許、中型免許、大型免許を、従業員に取得させるため、教習所に通わせ、そこでかかった費用も助成対象にできるようにしています。

運送業界にとって人材確保は重要課題

今日の日本における労働者不足はどの業界にも共通していることです。しかし、業種の特徴から、運送業界の人手不足は顕著で、さらに慢性化しやすい側面があります。

だからといって、仕方のないことだと諦めれば、いつまでたっても人手不足を解消することはできません。人手不足が長期的に慢性化すると、既存の社員に負担がかかり、離職してしまう社員が増えるなど、さらなる悪循環を生んでしまうでしょう。

人材、特に優秀な人材の確保は企業発展の要になるだけでなく、運送業界を盛り上げて物流をスムーズにすることで社会貢献にもつながりますから、最も重要な課題といえます。

人手不足の現状に流されるのではなく、自社が人手不足に悩んでいる原因を知って、積極的なアプローチを考えていくことが大切です。そのためにも、従来の採用の仕方を改善していく必要があります。

運送業の人手不足脱却のためにできること

人手不足の運送業界では、国を挙げての取り組みが行われていますが、十分ではありません。人手不足の現状が好転するかどうかは、結局のところ会社にかかっているためです。国の支援も活用しつつ、会社でも人手不足解消の取り組みをはじめるべきでしょう。

雇用基準の幅を広げる

国を挙げて、女性ドライバーや経験の浅い若いドライバーの雇用促進が行われています。会社でも雇用が進むように、雇用基準の幅を広げることがこれからは重要です。

女性の採用も視野に入れて採用活動を行っていきましょう。高齢者層についても、週2~3日の労働や負荷の少ない作業、作業へのシフトチェンジなど、やり方次第では活用できます。ほかに、外国人の雇用も視野に入れて求人活動を展開していくのも良いでしょう。

Workinでは、外国人採用に関する情報を多く掲載しています。これから外国人採用をはじめたい企業の情報集めにもおすすめです。

ロボットなどテクノロジーの利用を検討する

運送業界では、長時間労働が問題になっているとお話ししました。こうした長時間労働の問題は、人を増やすのではなく、ロボットなどのテクノロジー導入でも解消できるはずです。

たとえば荷待ち時間や荷物振り分け時間など、労働生産性の低い時間はロボットによる仕分けの自動化なども検討するべきでしょう。今後広まりが期待される自動運転技術の導入なども検討してみてはいかがでしょうか。

働きやすい環境づくり

運送業界は、ほかの業界と比較して、賃金など待遇に対して求職者のマイナスイメージが強いと紹介しました。こうした問題を解消し、雇用を促すには、待遇や評価の見直しが欠かせません。

すでに、ほかの業種と比較して賃金を上げている会社、多様な働き方受け入れのために勤務シフトを導入している会社、などもありますので、参考にしつつ、自社で取り組める環境づくりを進めていくべきでしょう。

ほかにも、入社後の未経験者の不安を払しょくするための教育、育成体制の強化、大型免許などの資格取得サポートなども挙げられます。

求人の際に魅力をうまくアピールする

労働環境の見直しなど、基本的な改善を図ったら、求人掲載を見直しましょう。いくら社内で改革を行っても、うまく発信できなければ、周知されず、人は集まってきません。求人を掲載している会社は、会社の魅力となるポイントなど内容を見直しましょう。SNSを使って企業アピールをするなどもひとつの手段です。

Workinでは、情報収集に役立つ記事だけでなく、求人掲載も可能です。Workinの求人掲載を活用して、求職者にうまくアピールしてみてはいかがでしょう。

人手不足を解消する採用活動のポイント

運送業界で人手不足を解消するための解決策を提示しましたが、待遇の改善やロボットの活用などは、資金繰りの問題で難しい部分もあるかもしれません。現状を改善したいなら、まずは人材を確保することです。

求人方法からのアプローチならどの会社でも取り組みやすいのではないでしょうか。採用を伸ばすポイントは、求人の仕方にかかっています。ここでは、人材確保のための採用活動のポイントをみていきましょう。

人手が集まらない原因を理解する

毎回同じような求人を出して、ただ応募者がくるのを待つだけになっていないでしょうか。このような採用活動は人手不足を放置しているのも同じです。

業界全体が人手不足といわれている運送業の会社でもしっかり人材を確保している会社はありますので、人手不足を業界全体のせいにして、自社を顧みないのは大きな問題でしょう。人手が集まらないなら、しっかり原因を追究し、改善策を取り入れることが重要です。

そのためにも、まずは同業他社と比較することからはじめます。待遇面で大きく劣っているなら待遇が問題と考えられますが、そうでない場合は求職者へのアプローチの仕方に問題があるといえるでしょう。

改善するには、SNSや口コミなどのCGM(Consumer Generated Media)を改善すること、アプローチでミスマッチが起きていないか社員の意見を取り入れることも方法に挙げられます。

自社の強みを掘り起こす

売り手市場優位の今日において、採用される側が主導権を握り、企業を選ぶ状況が続いています。たとえ競合に追いつこうと待遇を改善したとしても、似たようなものであれば知名度の高い大手に人手が流れるのが関の山です。

採用面で競合に差をつけるには、給与などの競争が厳しい部分ばかりに目を向けず、自社の強みとなる部分のアピールに力を入れたいもの。待遇面だけでなく、社風や安全性への取り組みなど自社で心掛けていること、自社の雰囲気もアピールの材料になります。

職を探す人の目に留まりやすい、注意を引き付けるようなものだとなお良いです。効果的なアピールにつなげるためにも、自社の強みの掘り起こしからはじめてみましょう。

効果的な求人募集をする

求人を出していてもなかなか募集が集まらない場合は、募集の仕方に問題がある可能性もあります。求める人材や年齢層に合わせた求人募集でないと、狙う層に届いておらず、目に触れる機会がないことも多いためです。

若年層ほどインターネットの使用率は高いので、そうした層を狙うなら企業説明会だけでなく、広告やSNSの活用など積極的なマーケティングで自社をアピールしていく必要があるでしょう。

また、求人を掲載するにしても、適切な媒体を選ぶことが、人目に触れ応募を増やすコツになります。おすすめは、 Workin です。Workinでは、都心だけでなく地方にも特化しているため、地方で募集をかけたい事業者様にも適しています。

正社員、派遣、バイトそれぞれの検索機能が充実しているなど地域密着求人の強みだけでなく、希望の求人を探しやすいことから幅広い層で利用されており、さまざまな人に自社をアピールすることが可能です。採用に役立つ情報も発信していますので、ぜひご活用ください。

まとめ

運送業界では人手不足が大きな問題となっています。労働環境に対するマイナスイメージや需要の増加、さらに運送業界特有のラストマイルやEコマース普及による積載効率の低下が要因です。

人手不足を解消するには、国の制度をうまく利用しつつ、会社が主体となってさまざまな取り組みを実施していくことが大切。採用基準の緩和や採用活動の見直しもそのひとつです。
特に求人募集は方法やアピールの仕方が適切でないと、労働環境の改善を行っても求職者まで響かない可能性がありますので、積極的な見直しを図りましょう。