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1+1を2にしない。シンプルな美味さを大切にする富山の寿司屋「にぎりや」

富山の魚が美味しい訳を知っていますか?

「天然の生簀(いけす)」と呼ばれる富山湾。魚の種類の多さと鮮度の高さには理由があります。

3,000m級の北アルプス立山連峰から流れ込む雪解け水が豊富な栄養分を富山湾に運び込み水生プランクトンをはぐくませ、それを目指して対馬海流に乗って暖水系の魚介類が集まり、日本海に突き出た能登半島が対馬海流の楯になって富山湾で回遊しているのです。
また、富山湾の特徴でもある海底谷は沿岸より急に深く潜り込んでいる地形で、魚介類の格好の住処となっています。

さらには、日本海固有水である深層水(水温が2℃以下)があることで、プランクトンが富山湾の中で混ざり合い、暖かい海流で育つ魚と冷たい海水を好む魚が富山湾の中で共存し、四季を通じ豊富なプランクトンを餌としているのです。

富山のブリ

その代表ともいえるのが、冬に北上する寒ブリ、春の産卵に沿岸近くまで来る白エビやホタルイカ、そしてそれらを餌とするベニズワイガニ等々、その数は日本海に生息する約800種類のうち、約500種が富山湾で確認されています。

地形が生んだ更なる奇跡の一つに漁場から漁港までの距離が近いことがあります。富山では定置網漁が沿岸で行われる為、鮮度を落とすことなく、魚をキズつけることなく消費者の元に届けることが可能。すなわち獲れたてを食べることができるのです。
まさしく「天然の生け簀」と呼ばれる所以です。

寿司屋激戦区の高岡に自分の店を

富山県高岡市は寿司屋の激戦区。修行を終え独立、この秋高岡の地で「すし居酒屋にぎりや」を開いたのが店長兼寿司職人の茗原(みょうはら)さんです。

にぎりや
「素材本来の味を活かした寿司作りを大切にしています。高岡の地で食通のお客様から選ばれるお店を目指しています。」と茗原さんは言います。

「今できること」を一生懸命にやって見えてきたもの

にぎりや・茗原さん
下積みの時代を経て、経験を積むことによって自分の目指す方向性を見つけました。それは単なる寿司屋としての存在だけでなく、一人ひとりのお客様に寄り添ったサービスをしなければいけない、というものです。

いわゆる寿司職人見習い時代には、どんな仕事であろうとも、常に一番を目指してきました。魚の見極めから、お客様にご提供するまでの下準備はもちろんのこと、店舗の清掃やサービスの内容まで一つ一つを手を抜かず真剣に「自分で考え」「妥協せず」頑張ってきたという自負があります。

そうして色々な仕事を積み重ねるごとに、単なる職人としてではなく「将来は……」という気持ちが高まってきました。「お店での仕事」が本当に見えてきたんだと思います。つまり、常連のお客様には単なる「好み」だけでなくその日のお客様の体調も会話の中からひも解いて、味付けやメニューを変えるなど、その時その一瞬に、一番おいしく味わっていただけるよう考え実践する勇気を持つこと、また、家族でのご来店や友人、会社の仲間同志の場合にはそのシーンに応じたお席の準備からお料理のコンセプトを演出することが、本当の職人だと思います。

富山の地は寿司屋にとって最高の舞台

にぎりやの寿司
四季折々の旬な食材に恵まれた富山だからこそ、大手業界やチェーン店には負けない寿司を提供したいと思っています。素材にしても富山は魚介類だけでなく、野菜やお肉などにも地元のブランドが多く、昔ながらの家庭の味や地域伝統の味が根付いています。これらをいかに活かすかが職人としての腕の見せ所です。「新しい時代に新しい味を追求すること」も大切ですが「富山の味を変えないこと」もとても大切なことなんです。

今の自分にできることを100%やりきること、そして次のステップへ

にぎりやの外観
富山を代表するお店として皆様に愛されることが第一。
店舗数を増やすことや、フランチャイズ化することを目標にはしていません。「すし居酒屋にぎりや」が沢山の人に愛され、その結果1店舗では足りないから、違う地域にもう1店舗増やそう!というふうに、必要性というかニーズに応じてお店を増やすことができれば最高です。

また、人材の育成には持てるものの全てを伝えることが大切だと考えています。 全てを伝承することが、子々孫々への「食育」になり、地域文化をつなぐことになると思っています。

その日、その日の最高の食材を見極める力と発想力が決め手

ショーケースに並ぶネタ
決して高価な食材ではなくても、その味を活かした何にも劣らない食材となりうる方法と手段を日々考え、最高の一品に仕上げることが私の使命だと思っています。例えば、富山で代表的な昆布〆のお寿司。その素材が持っているうま味に昆布のうま味がプラスされる調理法です。「1+1=2」ではなく、当店では「1.2<寿司の美味さ1.0プラス素材0.1プラス昆布0.1>」になるように、あくまで控えめに、それぞれの味が主張しすぎないように、引き算の美味さを追求しています。

大手チェーン店や売上げ第一主義のお店には真似のできない、メニューを毎日模索し提供したい。それを通じて富山・北陸の食文化、和食の発展に一役を担えるようなりたいと思っています。

女将の役割

お店の主役はお客様であり、社員であり、会社や地域に関わる方々。主役がいつも楽しく元気で幸せでいられるように。そのために今日一日をどんな表情や雰囲気、立ち居振る舞いでお迎えできたら最善なのかを毎日考えています。いわば「キャプテン女将」ですね。

寿司店に限らず飲食店のイメージとしては「日々同じことの繰り返し」と思われがちですが、ご来店いただくお客様との出会いは一期一会です。日々たくさんの素敵なお客様と出会うことができ、同じ店舗で働くスタッフと共に成長していことが実感できる環境には、何よりもやりがいを感じます。

また、男女を問わず、自分の仕事に誇りを持って、長く楽しく働くというのが私の理想像です。そのための基盤作りにスタッフの教育体制を充実させるというのが今の目標です。教育が充実したら、次はマネージメントやホスピタリティなどの専門性の高い分野にも視野を広げていきたいと考えています。
女将

ご協力、ありがとうございました!
株式会社海宝 すし居酒屋 にぎりや(from 富山県高岡市) 店長兼寿司職人 茗原さん http://nigiriya.net/